今回ご登場頂くのは、世界を代表するシンセサイザーアーティスト・作曲家としてグラミー賞ノミネートを含む数々の功績を築いてこられた冨田 勲さんです。
冨田さんは「NHK大河ドラマ」「新日本紀行」「ジャングル大帝」「きょうの料理」などのお茶の間で親しまれたの曲から、「たそがれ清兵衛」「武士の一分」等の映画音楽に至るまで、半世紀以上に渡り幅広いジャンルで音楽製作を続けてこられましたが、単なる音楽製作にとどまらず音響空間の創造ということを意識した作品作りにも第一線で挑戦してこられました。
このたびご自宅のリビングを改装され、ECLIPSE TDシリーズスピーカーをサラウンド導入頂けたのをご縁に、冨田さんの世界とECLIPSE TDシリーズスピーカーとの接点について伺う貴重な機会を得ることが出来ました。
普通のステレオ(2ch)の音はオーディオの音としては皆さん聴き慣れてきてますが、実際には我々は街へ行っても海に行っても山に行っても林の中を歩いていても、サラウンドの音を聴いて生活しています。
したがってサラウンドというのは普段我々が聴きなれた状態に近い状態で音楽が聴けるという意味で、実は一番開放された素晴らしい音の聴き方だと私は思うんです。ただどういう訳かサラウンドというと少々難しいハイレベルの音だっていうイメージがあったり、また制作側も「きちんと音量を設定してどの楽器がどの方向から来る」なんていうややこしいことを一つ一つプランしながらやるので、普通のステレオよりも手間が掛かり、結果としてサラウンドのソフトを充分市場に出せてないし、放送も最近減ってしまいましたよね。
でも本来は音源の配置はここであろうが、そこであろうが、どこだっていいんです。だって自然音っていうのはそう聴こえているんですから。それともう一つ、最近よく意識することがあるんですが、例えば軽井沢の林の中を歩いているとします。右側を小川が流れていて、左のほうには鳥の巣があるのか、鳥のさえずりが聴こえる。それで、風が吹くと何となく落ち葉が散る音がする・・・。そういう情景の中で、後ろの音にハッとして振り向いたとします。
頭がくるっと反対を向くわけですが、これがオーディオの場合、音をくるっと回したらちょっと大変なことになりますよね。ところが実際の聞こえ方には脳が演算している外の世界というものがあって、くるっと振り向いてもその状況は同じなんです。音を動かすのはいいですが、人間の頭脳の中で演算しているもっと外側の音声があるんだなということを最近良く意識するようになってきたんです。
つまり頭の外側は振り向いてどこを向いても同じ世界であり、川の流れの音がどっちから聴こえようがそれは同じだって事です。だからどこからどういう音を出すか、位相はどうするか、ということに時間や神経を使うよりも、例えば我々が生活している自然界に近いような音をもっとフランクで大雑把にマイクをおいて録っても、その場の雰囲気に重点を置いたサラウンドの音を作るようにしたら、もっと一般の人が特殊なものだという考えを持たないで聴くようになるんじゃないかという気がしています。
1977年にリリースした「PLANETS」の音場空間で表現したかったのも、宇宙の中はどうせ、こっちが前だっていうのはありませんからね。太陽が出ているからそっちが正面、というわけでは無いので。 だから好きな方向を向いて音場を楽しんで欲しい、という想いで制作したんです。
